イタリアンレザーの真髄 ── ミネルバボックスとプエブロの違い
イタリアンレザーの双璧と称される「ミネルバボックス」と「プエブロ」。
同じトスカーナの伝統から生まれながら、まったく異なる個性を持つ2つの革を、
タンナリーの歴史から経年変化の作法まで、静かに紐解きます。
イタリアンレザーが世界で愛される理由
革の世界において、イタリアは特別な地位にある。古代ローマ時代から続く皮革産業の伝統は、中世のフィレンツェで花開き、現在もトスカーナ地方に残る数十軒の老舗タンナリー(なめし工房)が、世界中のメゾンに革を供給している。
なかでも植物タンニン鞣し(Vegetable Tanning)と呼ばれる製法は、イタリアンレザーを他国の革と区別する決定的な特徴だ。ミモザ、ケブラチョ、栗の樹皮など、自然由来のタンニンを用いて時間をかけて鞣されたこの革は、使い込むほどに色艶を増し、所有者の手に馴染んでいく。工業製品でありながら、生き物のように変化する ── それがイタリアンレザーの魅力の核心である。
アリマートが独自革文具ブランドAlista Volareを2024年にローンチした際、素材として選んだのは、この植物タンニン鞣しの伝統を代表する2つの革だった。
ミネルバボックス ── 静謐な艶、完成された美
ミネルバボックス(Minerva Box)は、トスカーナ州サンタ・クローチェ・スッラルノに本拠を置くバダラッシ・カルロ社(Conceria Badalassi Carlo)が製造するフラッグシップレザー。1967年創業、約半世紀にわたり世界中のクラフトマンから支持されてきた、名門タンナリーである。
最大の特徴は、「バケッタ製法」と呼ばれる伝統技法を改良した、時間をかけたフルタンニン鞣しにある。植物性タンニンをじっくりと革に浸透させ、仕上げにオイルとワックスを手作業で塗り込むことで、独特の落ち着いた艶と、しっとりとした手触りが生まれる。
ミネルバボックスは「完成度が高い」革と評される。初めて手にした瞬間から美しく、購入した日が最も傷がない ── その静謐な佇まいは、ビジネスシーンや大人の日常に自然に溶け込む。
プエブロ ── 荒々しさが、時を経て艶に変わる
一方、プエブロ(Pueblo)は、同じバダラッシ・カルロ社の手による革でありながら、まったく対照的な表情を持つ。
最大の特徴は、仕上げ段階で革の表面を研磨するバフがけを施し、あえて起毛させた独特のマット質感だ。購入直後は落ち着いた艶消しの風合いだが、手で触れ、摩擦を重ねるごとに繊維が寝て、徐々に艶が浮かび上がる。数ヶ月、数年と経つうちに、革はまるで生きているかのように表情を変えていく。
「育てる革」と呼ばれる所以はここにある。最初から完成されたミネルバボックスに対し、プエブロは所有者が時間をかけて完成させる革だ。傷もムラも、すべてが使い込んだ証として刻まれていく。
ミネルバボックスとプエブロの比較
| 項目 | ミネルバボックス | プエブロ |
|---|---|---|
| タンナリー | バダラッシ・カルロ社(伊) | バダラッシ・カルロ社(伊) |
| 鞣し製法 | フルタンニン鞣し+オイル仕上げ | フルタンニン鞣し+バフ仕上げ |
| 初期の質感 | しっとり、艶あり | マット、起毛感 |
| 経年変化 | 色深化・艶深化(穏やか) | 起毛が寝て艶が浮上(劇的) |
| キズの扱い | 目立ちにくい | 最初は目立つが時とともに馴染む |
| 性格 | 最初から完成形 | 育てて完成させる |
経年変化(エイジング)の楽しみ方
イタリアンレザーを選ぶ最大の理由は、この経年変化にある。一般に化学鞣しの革は経年で劣化するが、植物タンニン鞣しの革は時を味方につける。
ミネルバボックスの場合
変化は緩やかで、上品だ。最初の数ヶ月で革内部のオイルが馴染み、色がわずかに深化する。1年、2年と使うと、手の脂や光にさらされた部分から徐々に艶が増し、革全体がしっとりと落ち着いていく。劇的な変化を求める方にはもの足りないかもしれないが、毎日使うものに穏やかな愛着を求める方には、これ以上ない相棒となる。
プエブロの場合
変化は劇的で、ドラマティックだ。使い始めて数週間で、指が触れる部分の繊維が寝て、ピンポイントで艶が浮かび上がり始める。3ヶ月、半年と経つうちに、その艶は広がり、マットだった表面が深い光沢へと変貌を遂げる。「自分だけの一点もの」へと育っていく過程こそが、プエブロ最大の楽しみだ。
エイジングを促進するコツ
どちらの革も、使い込むほど美しくなる。ポイントは ①日常的に手に触れる ②時々ブラッシングして繊維を整える ③乾燥しすぎたら専用オイルを少量与える の3点。ケアの詳細は革文具を長く愛用するためのお手入れガイドをどうぞ。
Alista Volare での採用 ── 2つの個性を一本の革文具に
Alista Volare のフラッグシップ「AVVIO(アヴィオ)」は、外装にミネルバボックスを採用した革製ペンケース。¥6,600(税込)、全4色展開。初めて手にした瞬間から美しく、ビジネスバッグにそっと忍ばせれば、静かに格を上げてくれる。黄金比率1:1.618で設計された佇まいと、職人の手仕事で仕上げられたコバ処理が、完成された革の美しさを際立たせる。
一方、2024年にMakuakeで達成率218%を記録した「AVVIO・PUEBLO(アヴィオ・プエブロ)」は、同じシルエットに最高級プエブロレザーをまとわせた一本。¥11,000(税込)、ネイビー/コッチネーラ/ボッティリア/オスクリタの4色展開。新品の佇まいから数年後の姿まで、一本で異なる物語を楽しめる。
どちらを選ぶかは、「完成された美を手にしたいか、自分で完成させる旅をしたいか」で決まる。正解はない。どちらもイタリアンレザーの真髄であり、それぞれの時間と歩むための道具だ。
2つの革、あなたならどちらを選ぶ?
Alista Volare のペンケースは、ミネルバボックス仕立てのアヴィオと、プエブロ仕立てのアヴィオ・プエブロの2シリーズ。ブランドページで全8色の表情をご覧ください。
Alista Volare を見る